影を操るアサシン組織の元頭領。ザトーは当初組織の末端であった。しかし自らの視力と引き換えに影を操る力を手に入れ、アサシンを率いる立場まで上り詰めた。
その後ザトーは組織の勢力を拡大させ、世界的なコミュニティを形成することに成功する。また、「終戦管理局」と深い繋がりを持ったことにより、ザトー個人の影響力は時を追うごとに拡大していった。しかし影を操る「禁呪」は正規規格から外れた禁忌の術であり、ザトーはその力の代償として命を落としてしまう。
ザトーの魂は黄泉の世界で霧散し、森羅万象の一部となる事で完全なる死を迎えたはずだった。

目覚めてすぐに、ザトーは「自分が蘇生された」事を理解した。以前と同じく「生きている」という感覚。ただ一つ違うのは「自分にも世界にも達観してしまった」事だった。生前の記憶はあるのだが、何事にも興味が沸かず、自分を蘇生させた元老院に軟禁されたまま、闇の世界から出ようともしない。ただ一つだけ違和感があった。かつてザトーが心から信頼した部下であり、自らの死のきっかけを作った女性「ミリア」の事を考える時だけは、他とは違う感情が沸いた。それは何故か? 考えても答えは出ない。ザトーはミリアに会って確かめるため、外に出る事を決めた。

生前のザトーは落ち着いた物腰で、したたかな思慮をめぐらせる人物だった。
しかし黄泉の世界で、およそ人間が味わうことのできる経験という全ての経験を無限に体験する事となったザトーは、蘇生後は何一つ感動を覚えない性格となってしまった。
それゆえ、自分を含め全ての出来事に価値を感じられない。良いも悪いも無く、喜びも怒りも、生きる意義すらも感じられない。「この世はつまらない」このつまらないですら退屈を感じたわけではなく、口癖のようにつぶやいているに過ぎない。
ただ唯一、ミリアに対してだけは感情と呼べる微かな衝動を覚える。